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2011年4月27日 (水)

キャンディーズ「春一番」の楽曲分析

こんにちは。

最近このブログはもっぱら音楽講座の告知に終始してしまっていますが、
今日はいつもとちょっと違う話を。

ここのところ、テレビ等でキャンディーズの曲が流れていますが、
キャンディーズの「春一番」という曲、もちろん以前から知っているのですが、
改めてメロディーを吟味してみるとなんだか不思議なメロディーだなぁと思って、
どうしてだろうと思って、ちょっと楽曲分析してみました。


まずこの曲はシの音から始まる短調(ロ短調=ビーマイナーB minor)なのですが、
何でこの曲が不思議だなぁと思うのかというと、
短調の場合、主音に解決するための導音というものを作るために、
音階の第7音目を半音あげて使うのが常です。
(以前のブログ 音楽基礎の基礎③音階その2を参照)
この曲の場合、シの音が音階の最初の音であり最後の音(=主音)ですので、
通常であれば、第7音になるラの音が、導音の機能を果たすため半音あげられ、
ラの♯で使われます。

ロ短調の音階
シード♯ーレーミーファーソ(♯)ーラ♯ーシ
※第6音のソは和声短音階の場合はそのまま、旋律的短音階の場合は♯がつきます。

ですが、「春一番」ではこのラ♯が元のラの音のままで使われています。
ただ、これは例えば教会旋法のドリア旋法等であれば使われる音ですので、
全くこれが無い形、というわけでもないです。
さらに、「春一番」では第6音がそもそもメロディーの中で使われていないので、
これがソの音もラの音もそのままの音で使われる自然的短音階という解釈もできると思います。

そして、このラの音が♯しないことによって、
和声進行にも通常の短調(いわゆる和声的・旋律的短音階)とは異なる形になっています。

まず、この曲のメロディーからのコード進行(伴奏はこの限りではないかもしれませんが)を見ると

Bm-D-A-Bm|Bm-D-A-Bm|Bm-D-A-Bm|
A-D-Bm-A|A-D-D-F♯m|Bm-D-A-Bm|

大体こうなると思います。


これを音度(和声どおしの関係)でみると

Ⅰ-Ⅲ-Ⅶ(導音無し)-Ⅰ|Ⅰ-Ⅲ-Ⅶ(導音無し)-Ⅰ|Ⅰ-Ⅲ-Ⅶ(導音無し)-Ⅰ|
Ⅶ(導音無し)-Ⅲ-Ⅰ-Ⅶ(導音無し)|Ⅶ(導音無し)-Ⅲ-Ⅲ-Ⅴ(導音無し)|Ⅰ-Ⅲ-Ⅶ(導音無し)-Ⅰ|

となります。


通常は、Ⅰの前はⅤ(導音あり)になるのですが、この曲はⅤの代わりにⅦの導音無しからⅠに入っています。クラシック以外ではこのような進行も時々は使われていると思います。ちなみにⅦでラの音が導音で半音上がっている場合はⅤ7の根音省略形(ファ♯・ラ♯・ド♯・ミのファ♯を省略した形)と同じになるので、Ⅴの代わりとして使われることは良くあります。

さらに展開部にあたる

A-D-Bm-A|A-D-D-F♯m|

は、ロ短調の平行調(同じ調号(その音階を作る際に必要となる♯や♭)を持つ長調)であるニ長調(レから始まる長音階=ディーメジャーD major)の和声で考えると

Ⅴ-Ⅰ-Ⅵ-Ⅴ|Ⅴ-Ⅰ-Ⅰ-Ⅲ(=ロ短調のⅤ導音無し)

となり、ロ短調でⅦの導音無しという宙ぶらりんだった和声がⅤ-Ⅰという、
二長調にとってはⅠの主和音に行くための重要な属和音に機能が変化しています。
ここは一時的に(そしてさりげなく)ニ長調に転調しているともいえます。

そして、通常ならばロ短調のⅠへ戻る際にⅤ(つまりコードで言うとラ♯を含んだF♯)を使ってロ短調に戻ると言う強い吸引力でロ短調に戻すのですが、その重要な役割を果たす導音のラ♯がラの音のままなので、ニ長調からロ短調へ戻る際も、なんとなくあまりメジャーからマイナーへ変わったような感覚がなく戻る感じです。

そんな感じで、この曲は基本ロ短調なのですが
二長調のⅤであるAが全体を通して出てくるので、
マイナーなのに暗くない、だけどメジャーなのはごく一部分なので
メジャーとマイナーの中間にいるような、不思議なメロディーになっているのではないか、

というのが私自身の結論です。sweat01

他の曲も分析したわけではないのでわかりませんが、
なんとなく日本の昔の歌謡曲はこういうメジャーとマイナーの合間のような、独特な雰囲気があるような気がします。

というわけで、気になったので「春一番」の楽曲分析…でしたcoldsweats01

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コメント

ご指摘ありがとうございます!
私もこの曲について詳しいわけではなく、聞きかじった記憶で分析してしまっただけなので、Bメロの冒頭は勘違いだったかもしれませんね。
F#mのところも、F#7にしたとしてもメロディーのa音はテンションの音になるので
通常演奏する時にはF#7にした方が自然ですよね。

投稿: maffin | 2011年8月12日 (金) 17時11分

はじめまして。興味深く拝見しました。Bメロの頭のコード、確かAメジャーではなく、Emか、少なくとも on Eで演奏されていると思います(A D Bm Aではなく、Em D Bm A)。

マイナーキーの歌謡曲でIIImで鳴らしているケース、少なくないと思います。ここを毎回III7で演奏したり、メロディーもこの曲で言えばA#を含めると
少し演歌の匂いが強くなりますね。

もっとも、キャンディーズの場合でも、ライブコンサートでレギュラーのバックバンド(ロックバンドのフォーマット)で
伴奏される場合には、
F#mの代わりにF#7が使われていたケースもある様です。
もっとも、イントロへの導入部だったり、「出かけませんか」のところだったり…

投稿: 通りすがりのエレキベース弾き | 2011年8月 5日 (金) 17時37分

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